2020年は、長く山口を拠点に活躍した画家で禅僧の雪舟生誕600年にあたる。その記念事業が、9月から12月にかけて山口市内各所で開催。各所で準備が着々と進められている。
山口市菜香亭(山口市天花1)では、雪舟の最高傑作とも言われる、国宝「山水長巻」(四季山水図)の模写を制作中だ。水墨に淡彩を交え、中国の山水の四季の移ろいが描かれている「山水長巻」は、幅40センチ、長さ16メートルにも及ぶ長大な絵巻。同館の活動を支援する「菜香亭サポーターズ」の原田哲也さん、篠田奈央さん、森永友世志さんの3人が手分けして、その4分の3サイズで描き写している。
予定されている事業は、9月16日(水)から11月15日(日)までの「なりきり雪舟~みんなで作ろう長巻図」。長さ12メートルになる長巻図の模写を同館の縁側に並べ、来館者に自由に筆を入れてもらう。それを「雪舟さんへの600回目の誕生日プレゼント」にしようというものだ。
3人とも水墨画の制作は初体験。長巻図のコピーの上に用紙を置き、まずは鉛筆で粗くトレース。その上から、さまざまな太さの筆を使い、墨を重ねていく。それぞれ4メートル分を、約30時間かけて作り上げるという。ただ模写をするのではなく、来館者が筆を入れやすくするため、あえて白地に近い状態にしておく部分も設けている。また、竹林とパンダ、鳥獣戯画のカエルとウサギ、瑠璃光寺五重塔など、元の絵にはないワンポイントも随所に盛り込まれている。「遊び心も持ちながら、何でも描き込んでほしい」と原田さんは話している。
9月15日(火)から10月18日(日)まで、山口県立美術館(山口市亀山町3)では特別展「雪舟と狩野派」が開催。「山水長巻」も展示される。「県立美術館で本物を見て、その足で描きに来てもらえたら」と、同館の吉岡志峰さん。同館ではさらに、ミニ枯山水庭園を作るワークショップやスタンプラリーなどの雪舟関連イベントが予定されている。そのほか、山口市歴史民俗資料館、山口情報芸術センター、十朋亭維新館、C・S赤れんがなどでも、関連イベントが予定されている。
大内氏の庇護の下、遣明船で明(中国)に渡るなどし、長く山口を拠点に活躍した雪舟。「山水長巻」は、彼が67歳だった1486年に、山口で完成させた。水墨画の絵師として、そして作庭家としても超一流の彼は、1955年にユネスコの定める「世界10大文化人」に、東洋人としてただ一人選ばれた。また、そのことで、外国の切手に登場(1956年、旧ソ連とルーマニア)した最初の日本人でもある。