8月29日(日)まで、山口県立美術館(山口市亀山町3、TEL083-925-7788)で企画展「小村雪岱スタイル 江戸の粋から東京モダンへ」が開催されている。
小村雪岱(1887~1940)は、大正から昭和にかけて活躍した商業美術家。泉鏡花や佐藤春夫といった人気小説家の書籍装幀や挿絵、歌舞伎や演劇に用いる大道具、衣装デザインといった舞台芸術、工芸など、幅広いジャンルで才能を発揮し、「昭和の春信」との呼び名も高い。「雪岱が挿絵を描いた新聞小説の購読部数が伸びる」という社会現象を巻き起こすほど、大衆からの人気も絶大だった。
また、資生堂の商品ロゴやパッケージに使用されている独特の書体は、雪岱が同社のデザイン部に勤務していた時に基礎を築いたもの。「資生堂書体」と呼ばれ、現在も使用されている。
マルチな才能を持つ雪岱が亡くなったのは、戦局が悪化していく1940年。活躍の場が商業美術だったことや、亡くなった時期が戦中、戦後の動乱の中だったことからその功績は“忘れられて”いたが、繊細な描線、大胆で印象的な構図は、没後50年を経た今「無駄をそぎ落とし、シンプルさを追求した、繊細でスタイリッシュな作風」として、急速に再評価が高まるとともに、注目を浴びている。
今回は、雪岱の主要な仕事だった挿絵、装幀、舞台装置原画や、数少なく貴重な肉筆画、版画作品に加え、「雪岱スタイル」のルーツである江戸時代中期の浮世絵画家・鈴木春信や同時代に活躍した画家・鏑木清方といった作家の作品も展示。西日本で初めて、総合的に雪岱を紹介する展示となっている。
また、期間中は浴衣や着物で来館すると、入館料が200円引きになる「ゆかたで雪岱スタイル」も実施。また、館内ショップでは、雪岱にちなみ資生堂パーラーの商品も販売している。
「クールなだけでなく、そこに消えゆく時代の面影や、粋な情緒と余韻が漂うのが、他にない魅力。どこまでも洗練された『美』に触れる悦びを堪能して」と同館は来場を呼びかけている。
開館時間は午前9時から午後5時まで(入館は4時まで)。観覧料は一般1300円、70歳以上と大学・高専生1100円。18歳以下は無料。
なお、新型コロナウイルスの感染拡大の状況に応じて、開館時間の変更やプログラムが変更される場合がある。
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