財務省山口財務事務所(TEL083-922-2190)は、「県内経済は、新型コロナウイルス感染症の影響がみられるものの、持ち直している」と、四半期ごとに行っている「山口県内経済情勢」の2022年4月について総括判断をした。昨年10月までの4期連続「厳しい状況にあるなか、一部に弱さが見られるものの、緩やかに持ち直している」から上方修正した今年1月の判断を据え置いた。
その要点は、「『個人消費』は新型コロナウイルス感染症の影響により、持ち直しの動きに一服感がみられる。『生産活動』は持ち直している。『雇用情勢』は、新型コロナウイルス感染症の影響が残るものの、持ち直しつつある」とした。そして、「設備投資」は前年度を下回り、「企業収益」は増益見込み。また「住宅建設」「輸出」とも前年を下回っている。
ヒアリングした企業からは、
- 「コロナワクチンの3回目接種が開始され、副反応で解熱鎮痛剤や冷却シートが売れているほか、引き続き、食料品が全般的に好調」(ドラッグストア)
- 「感染症の再拡大により内食・中食需要が高まり、冷凍食品や総菜などが好調」(スーパー)
- 「コロナ禍の食材のまとめ買い需要で大型冷蔵庫が堅調となっているなど、家電全般の需要は底堅く推移しているものの、売り上げは前年と比べると下回っている」(家電大型専門店)
- 「新車需要が底堅く、受注は好調に推移しているが、半導体不足などの影響により納期が遅延しているため、新車の登録台数が落ち込んでいる」(自動車販売店)
- 「年明け以降は感染症の再拡大により、予約のキャンセルが相次ぎ、平日は臨時休館を設けるなどの影響が出たものの、3月中旬頃からは学校の春休みもあって予約が増加している。今後は、観光シーズンに向けてさらなる客足の回復に期待している」(宿泊)
- 「まん延防止等重点措置が解除されたことで、修学旅行の需要が回復してきている。一方で、ロシア・ウクライナ情勢の悪化の影響等もあり、食材などあらゆるものの価格が高騰しているが、他社との競合や需要の低下への懸念があるため、価格転嫁ができていない」(宿泊)
- 「新型車効果もあり、北米などの海外向けを中心とした需要が堅調であるものの、足下では半導体等の部品が調達しづらい状況となっており、部品の調達に応じた生産を行っている」(輸送機械)
- 「国内向けは都市部の再開発向けなどの需要が引き続きあるが、国内全体の需要は低迷しており、出荷が減少している。需要が堅調である海外向けの出荷を増やすことで、出荷量を維持し、フル生産を続けているものの、出荷先によっては感染再拡大によるロックダウンの影響で出荷が減っている」(窯業・土石)
- 「半導体の部品不足の影響で自動車向けなどの出荷が減っているが、引き続き、産業用機械や半導体製造装置向けなど他の用途向けの需要が堅調となっているため、生産量を維持している」(鉄鋼)
- 「海外の旺盛な需要を背景にインフラ向けの樹脂原料や、環境対応車等の需要拡大から電池向けの原材料などの需要が堅調であることから、今後もフル生産が続く見込みである。ロシアから調達している原材料について、代替の調達先を探しているが、価格がさらに高騰することや調達がしづらくなることを懸念している」(化学)
- 「年明け以降は、オミクロン株の拡大により入国規制が強化されたことから、技能実習生が採用できなかったため、人手不足感が増している」(食料品)
- 「業績好調を受けて業務量が増えており、引き続き、従業員の採用人数を増やしていく方針である。また、技術開発に長けた人材やDXに対応できるような専門的な人材の確保にも積極的に取り組んでいく」(情報通信機械)
- 「前年度は新型コロナウイルス感染症の影響による利益減少を受けて、一部の設備投資を控えていたため、その反動で増加する見込み」(窯業・土石)
- 「電気自動車などに使用される電子部品の需要が旺盛となっており、生産能力の増強投資を行っている」(情報通信機械)
などの声が聞かれた。
そして「先行き」については「感染対策に万全を期し、経済社会活動が正常化に向かう中で、各種政策の効果や海外経済の改善もあって、景気が持ち直していくことが期待される。ただし、ウクライナ情勢等による不透明感が見られる中で、原材料価格の上昇や金融資本市場の変動、供給面での制約等による下振れリスクに十分注意する必要がある。また、感染症による影響を注視する必要がある」としている。