山口商工会議所(河野康志会頭)は、山口市内の通勤時等における公共交通の利用実態を把握しようと、会員事業所に対して「公共交通に関するアンケート調査」を2回にわたり実施。その結果を、このほどまとめた。
1回目調査
第1回目の調査は、昨年8月17日から9月1日にかけて、市内327事業所に対して投げかけた。その約半数に当たる187事業所から、1303人分の回答が寄せられた。
まず「公共交通機関の便利さ」を聞いたところ、「満足」(6.3%)と「まあ満足」(15.7%)の"満足派"は22.0%。逆に「不満」(20.0%)と「やや不満」(13.6%)の"不満派"は33.6%と、"満足派"の1.5倍を占めた。「どちらともいえない」は29.0%で、「わからない」は15.4%だ。
公共交通の利用頻度は、「鉄道」「路線バス」とも「利用していない」が最多(各59.0%、79.5%)で、「年数回程度」(各30.7%、15.1%)、「月1回程度」(各4.7%、2.4%)と続いている。「利用しない理由」(複数回答)は、どちらも「自動車で移動できる」(各77.1%、73.5%)が最多。また、「利用について不満に感じること」(同)は、「運行本数が少ない」(各39.2%、25.8%)と「利用したい時間帯に運行していない」(各21.6%、15.3%)との回答が多かった。さらに「利用について不安やちゅうちょすること」(同)は、同様に「運行本数が少ない」(各21.4%、18.1%)がトップ。「好きな時間に出かけられない」(各15.7%、15.1%)、「行き帰りの時間の便がない」(各10.2%、10.4%)、「駅・停留所まで遠い(各15.8%、7.8%)、「行きたい場所に運行しない」(各7.1%、8.8%)などの答えも多かった。
一方、「タクシー」の利用頻度は、「利用していない」(57.1%)が過半数を、「年数回程度」(31.6%)が約3割を占めている。「月1回程度」(6.4%)は、「鉄道」「路線バス」より多かった。「利用について不安やちゅうちょすること」(同)は、「料金が高い」(41.0%)がトップ。以下「特にない」(27.7%)、「利用料金が事前にわからない」(12.4%)、「電話でタクシーを呼ぶのが面倒」(11.7%)と続いた。
「外出時の移動手段」は、「通勤」「買い物」「通院」「文化活動・娯楽・飲食」とも、「自動車(自己運転)」が圧倒的に多かった(それぞれ83.2%、85.9%、87.9%、76.0%)。だが、「運転できなくなった場合の移動手段への不安感」を聞くと、「とても不安がある」(48.9%)と「やや不安」(37.4%)を合わせると、8割以上の人が不安を感じていることも浮き彫りになった。
2回目調査
1回目調査の"マイカー依存"を受けて、公共交通で通勤すると仮定した場合の手段やルート、さらにさまざまな施策が利用の動機となり得るかどうかを深掘りした。調査期間は、今年1月19日から2月5日まで。327事業所に対して調査を依頼し、441人が回答した。
「仮に公共交通手段で通勤する場合、どの手段を選ぶか」には、4割が「路線バス」(40.4%)、3割が「JR山口線」(28.8%)を選択。「どちらも利用できる環境にない」(30.8%)人も3割を占めた。
仮に鉄道で通勤する場合、朝の乗車時間は「午前7~8時」(45.0%)、「6~7時」(26.8%)、「8~9時」(23.5%)の3時間でほぼ100%になる。一方、帰宅時の乗車時間は「午後6~7時」(44.9%)、「5~6時」(23.6%)、「7~8時」(22.8%)の順。また、終電の希望時間は「午後11時半」(63.0%)が最も多かった。
一方、仮に路線バスで通勤する場合、朝の乗車時間は、「午前7~8時」(47.6%)と「8~9時」(23.8%)はJRとほぼ同じ割合だったが、「6~7時」(17.5%)は1割ほど少なかった。帰宅時は「午後6~7時」(36.0%)、「5~6時」(34.3%)、「7~8時」(14.6%)と続いている。終バスの時間は「午後11時半」(44.4%)と「午後11時」(30.9%)を希望する声が多かった。
1時間当たりの運行便数の現状(現行は1~2本)への満足度を確かめると、路線バス・鉄道とも15~20分おきに発着する「3~4本」(各63.8%、70.8%)を希望する人が6割を超えている。
また、「路線バスが市内の一定エリアで定額運賃になった場合、利用したいと思うか」には、7割超の人が「思う」(75.3%)と答えた。「国道9号線に新路線バスが運行した場合、路線バスを今より利用したいと思うか」には約3割が「思う」(33.3%)と回答。「JR山口駅と湯田温泉駅の中間あたりに新駅が設けられた場合、山口線を今より利用するか」への「思う」(17.7%)は、2割以下だった。
山口市が毎年実施している「ノーマイカーデー」には、8割以上の人が「参加したことがない」(83.0%)と回答。その際チケットを配布する形で実施されている「バスの運賃半額は利用の動機になるか」には、「なる」(52.8%)と「ならない」(47.2%)がほぼ半々だった。
4月8日に東京都内で「日本版ライドシェア」サービスが始まったが、ライドシェアについても聞いた。6割の人が「知っている」(60.3%)と回答。そして「ライドシェアで心配なこと」(複数回答)を聞くと、「ドライバーとのトラブルなど防犯」(23.8%)がトップ。以下「事故が起きた際の対応や補償」(22.1%)、「ドライバーの運転技術」(14.9%)、「料金」「乗りたいときにすぐ手配できるかどうか」(ともに14.1%)、「既存タクシー事業の縮小」(5.8%)と続いた。さらに「タクシーサービスが行き届いていない交通空白地でのライドシェアについてどう思うか」(同)には、「効果的」(36.0%)、「一定の運転技術の確保など安全性が必要」(32.8%)、「料金負担が心配」(20.4%)との声が多かった。
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第1回調査では、「公共交通を維持・確保するための費用負担のあり方」についても聞いた。「地域全体で公共交通の維持を図るべき」(83.2%)との声が8割を超えており、「利用者の運賃で維持するべき」(14.8%)との意見を大きく上回った。「維持すべき理由」(複数回答)は、「高齢者や学生には重要な交通手段だから」(51.0%)、「日頃は使っていなくても、使いたい時にあると便利だから」(31.6%)、「マイカー利用に比べて環境に対する負荷が少ないから」(8.0%)、「自分あるいは家族が利用しているから」(6.9%)。そして「公共交通を維持するための望ましいと思う方法」は、「既存の税金の使い道を変えることで不足分を補う」(50.6%)が過半数を占めている。「マイカー所有者も可能な時は公共交通を利用する」(23.2%)がそれに続いた。
同所では「維持するための望ましいと思う方法で『既存の税金の使い道を変えること』が50%を超えており、今後の公共交通に関する整備については、しっかりとした検証のもとで施策を決めていく必要があると思う」とまとめている。