平均して一週間に三回は市内循環バスに乗る。朝七時のバスには、勤め人や学生が多く車内が静かだ。九時過ぎのバスには病院通いの人が多く、馴染みの人がいて、おしゃべりの花が咲く。
帰りの午後二時頃のバスには、重い買い物袋を提げた人達が、よいこらしょ、と乗り込む。近頃は年配の男性の姿も見る。女性より男性の買い物袋は小さい。花束が袋から顔を出していて、皆がそれを優しい顔をして見ている。三時過ぎのバスには、学校帰りの小学生が乗ってくる。彼らは行儀良く、揺れながら本など読んでいる。六時前後のバスに乗ったら、帰宅する通勤の人達と一緒になる。
帰途 杉山平一
の電車にのりこんできた/工場労務者/けさ 働く意志のつまっていた/その心の弁当箱はいまカラカラはずみ/帰りゆく夜の家庭を思う/幼な児らすでに寝入りたるや/鼻に汗にじませ/つぶらな瞳はいま席を求める/観劇帰りの人よ/立って/席をゆづれ/明日 きみらがまだ床にあるとき/早くも冷い朝風をきって仕事へいそぐ人に/立って/席をゆづれ
バスには立った人はいなかったが、仕事帰りの彼らは一様に明るい顔をしていた。私の見間違いかな?私の目は最近視力が落ちた。見たい事だけが、見たいように見える。