日本人の死亡原因の1位である「がん」。山口県立宇部高卒業生で京都大特別教授の本庶佑さんがノーベル医学生理学賞を受賞したことで、新たな免疫治療薬に期待が高まっているが、国内のがん検診受診率は先進国に比べても低く、中でも山口県の受診率は、ほとんどのがんで全国平均を下回っている。早期発見・治療への意識が低いためか、2018(平成30)年3月に作成された山口県の罹患集計によると、罹患率はすべての部位で全国値を上回る結果となった。
日本のがん統計は、罹患データは4~5年、死亡データは1~2年遅れて公表される。これらのデータを元にした本年度の全国がん罹患数は、3年連続で100万人を超えると予測されている。
「山口県のがん登録」(平成26年罹患集計)によれば、山口県内では年間約5000人ががんにより死亡しており、全死亡者の約3割を占める。罹患率を全国と比べると、特に男性は前立腺、肺、胃、結腸・直腸、肝において平均値より高く、女性は男性ほどではないが、結腸・直腸、肺の差が他の部位と比べて大きい。
また、年齢別にみると、男女ともに65歳以上が罹患者の約4分の3を占め、ほとんどの部位のがんは、高い年齢ほどかかりやすい。胃がんは男性の55歳以上と女性の70歳以上で1千人に1人以上、結腸がん(上皮内がんを除く)と肺がんは男性の60歳以上と女性の65 歳以上でそれぞれ1000人に1人以上が罹患している。女性の場合は特に、25歳から50歳未満で子宮頸部の上皮内がんの罹患が多くなるほか、乳がん(上皮内がんを除く)は40歳以上で1000人に1人以上が罹患しており、若い年齢でかかりやすい傾向にある。
一般に住民検診が実施されている胃、大腸、肺、乳房、子宮頸部において、がん検診や健康診断、人間ドックが発見の契機となった症例の割合は、胃19.1%、大腸18.2%、肺14.3%、乳房 23.1%、子宮頸部50.7%、前立腺21.8%。がん検診によって、約7割のがんが発生臓器内にとどまっている早期の「限局」状態で発見されているが、検診以外では「限局」状態の発見が約4割まで下がることも分かっている。検診で早期の発見ができた場合、5年後の生存率は大腸がんの場合95.5%と比較的高く、その他部位でも自覚症状がない初期の段階で発見・治療することは、5年生存率を飛躍的に高めることにつながる。行政や医療機関では「『他人ごと』と考えず、まずは検診を受けてほしい」と呼びかけている。
該当年齢の無料検診も活用しよう
次の節目年齢(平成31年4月1日現在の年齢)に該当する人は、各種検診を無料で受診できる(送付される「平成31年度がん検診等診察券」が必要)。
子宮頸がん検診:20歳、25歳、30歳、35歳、40歳
乳・胃・大腸がん検診:40歳、45歳、50歳、55歳、60歳