2021年度に供用開始が予定されている「新山口駅北地区拠点施設」。施設全体の延べ床面積は約1万4900平方メートルで、基本設計時より約1080平方㍍増えた。事業費は約109億8千万円。これから本格化する本事業の概要とあわせ、整備される施設等を中心にした「小郡都市核」全体の機能強化を目指す取り組みについて紹介する。
産業・健康・交流の拠点づくり
「出会う、つながる、生まれる、広がる」をコンセプトに、2018(平成30)年末に実施設計までが完了。2019(平成31)年4月着工、2020年度完成、2021年4月供用開始が予定されている(多目的ホールのみ同年夏から稼働予定)。交流人口創出と産業支援・人材育成機能の役割を果たす拠点として、最大2000席(可動席)の収容能力を持つ多目的ホールをはじめ、異業種のビジネスマンと学生の交流事業や学習環境整備が予定されている「コワーキングスペース」やシェアオフィスおよび相談窓口で構成される「起業創業・中小企業支援センター」、会議室、やまぐち産業振興財団・山口しごとセンター・山口県福祉人材センターなどの入居が決定している「公的機関等オフィス」などが設けられる。
また、地域医療機関と連携したメディカルフィットネスを含む健康産業支援施設「ライフイノベーションラボ」、若年層向け居住型の人材育成施設「アカデミーハウス」(21人入居)、環境配慮住宅(4棟、36戸)も配置。音楽演奏やダンスに対応可能なスタジオ、駐車場(立体・平面約450台)、駐輪場なども整備される。
さらに、「二つのおもて(顔)を持つ施設づくり」を設計コンセプトに掲げ、施設の東側と西側にそれぞれ広場が誕生する。駅前の「出会いの広場」は多目的ホールのホワイエに面し、ホールで開催されるイベント等の連携で交流が生まれることを想定。西側の「地域交流広場」では地域住民と居住者、施設利用者等によるコミュニティー形成が見込まれている。二つの広場をつなぐ吹き抜けの自由通路やロビーにはテーブルやいすが設置され、気軽に読書や学習に利用できる。
「小郡都市核」の未来像
新幹線駅として交通結節点の特性を持つ新山口駅。拠点施設を中心に、駅の南北に分断された市街地の一体感が形成されてきた。小郡都市核の産業交流拠点としての機能強化の一環として、「産業」「にぎわい」「生活文化」の三つの創造視点をもとにした整備が、今後も進められる予定だ。
北口の駅前通りを中心として、西側の新山口駅北地区重点エリアにおける新市街地ゾーンについては、北口と県道山口宇部線を結ぶアクセス道路や駅北地区エリア内道路の整備、市道矢足新山口駅線の電線地中化、歩道拡幅、民間主導の市街地再開発支援など、インフラ整備の取り組みが促進。また、東側の旧市街地ゾーンでは、明治通り、大正通りをはじめ個性あるまち割り構造を生かした都市空間の形成が、南側の業務集積ゾーンでは広域経済を支える活発なビジネス交流が展開される空間づくりの推進や南口駅前広場の整備構想、企業誘致やオフィスビルの建設などが計画されている。
今後は、拠点施設を中心にイベント等の誘致に向けた「オール山口」の受け入れ体制づくりが進められる。行政、山口観光コンベンション協会、山口商工会議所、湯田温泉をはじめ山口市内全域の旅館組合や料飲組合、観光施設、公共交通、旅行代理店、メディア等との連携による相乗効果も期待される。
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新山口駅 今昔
1900(明治33)年10月、三田尻-厚狭間の山陽鉄道が開通。地主古林家の協力により建造された「小郡駅」が同12月に開業した。1975(昭和50)年3月に開通した山陽新幹線の停車駅にも決定。2003(平成15)年10月のダイヤ改正に合わせて「新山口駅」に改称となり、山口県内で初めて新幹線のぞみ号の停車駅となった。
在来線には山陽本線、市内および島根県津和野・益田方面に通じる山口線、阿知須・宇部中心部方面へ通じる宇部線が接続。1979(昭和54)年に復活した「SLやまぐち号」も期間限定で運行する。
在来線ホームには、かつての時刻表や駅長事務室なども掲示保存されていたが現在は撤去されている。旧駅名表示板に「小郡駅」の名残りを感じることができる。