もう十五年は前になろうか、スイスに旅行した友人からお土産に絵本を貰った。『にじいろのさかな』(マーカス・フィスター作・谷川俊太郎訳)。「まあきれい」。表紙を見た時感嘆の声を上げた。キラキラと輝くウロコをつけた魚が泳いでいるのだ。ウロコは、光の加減で七色に変わっていく。頁をめくるたびに小さな魚がキラリと光り、次々と色を変え、海の中を泳いで行く。
「“にじいろの さかな展”が開かれているわよ」と土産の絵本をくれた友人から電話があった。八月末、北九州市立美術館分館に勇んで出かけた。少し秋の気配がある涼しい日だった。
あの、にじいろの魚がいた。おひさしぶりですね。あいかわらずピカピカね。ざっと数えたらウロコは30枚くらいで約3分の1にきらきらの箔が貼ってある(最初に魚を描き色を付け印刷する。その上に輝く箔を貼りもう一度プレスする。なので魚には凹凸がある)。赤や黄色のウロコもある。唇は黄色。身体は水色。
奥の部屋から子供達の声が聞こえた。そこには「にじろいろのさかなぬり絵」コーナーがあり、子供達が一心に塗っている。あっという間に線だけだった魚がにじいろになっていく。仕上げに金色を慎重に塗っていく。魚が得意げに泳ぎ始める。
お土産に一冊、にじいろのさかな君を連れて帰った。