八月七日の“おんなの目”に“私が殺しました”という題で、毛虫一家を殺虫剤を噴霧し殺した、と書いた。
昨日、その仇を討たれた。毛虫の毛が私に降り注いだのだ。椿の木には毛虫がいるというのは知っていた。なのに、半袖で二の腕をむき出しにして、椿の実を採った。大きな浅緑色の実に惹かれて実を引っ張った。実はしっかりとついていて、木がわさわさ揺れた。毛虫やその毛やなにやかが落ちてきた。しばらくすると、両腕、首筋、胸まで赤い発疹ができた。痒くてたまらない。すぐに毛虫にやられたと思った。毛虫一族は結束が固い。私が殺したという情報が飛び交い、彼等は仇討ちのチャンスを狙っていたのだ。
痒くて赤い発疹が百個以上できたが、病院に行かなかった。私の祖母は田舎の農婦で一生よく働いた。少々の腹痛も頭痛も蜂に刺されても置き薬をつけて治した。ましてや毛虫ごときには負けなかった。小柄な腰の曲がった祖母は精神共に強かった。村の人達は皆、凛々しかった。
私は軟弱だ。すぐに心が萎れ、つまらないことをいつまでも引きずる。五日も辛抱すればこの痒みは止まる。これからの為にも軟弱な身体と精神を立て直さねばならない。毛虫を殺したのだ、仇を討たれても仕方がない。納得だ。見事な毛虫族の結束!