萩往還沿いの施設の一つに御駕籠建場がある。文字通り駕籠を置く場所、すなわち駕籠を降ろして藩主らが休憩する場所である。萩から歩き始めて最初のものは、悴坂峠にあるそれである。萩往還には、この他に6カ所設けられていた。復元されているものは、ここ悴坂と一の坂駕籠建場の2カ所のみである。
イラストにある小屋の中に見える石に囲まれた二つのスペースが駕籠を降ろす場所。ちなみに、文献によると萩藩参勤交代のお供の最大人数は、1663人という記述がある。となれば、標高146メートルに過ぎない悴坂峠では、藩主が休憩する間、行列の最後尾はまだ峠に差し掛かってもいなかったことだろう。
文・イラスト=古谷 眞之助