もし、開催中の「ヨーロッパ絵画 美の400年」展で展示されている作品のうち1点だけもらえるとしたら、どれを選ぶだろうか。そんな「夢の1点」を自宅に持って帰って、どこに飾るか想像しながら会場を見て回るのもおもしろいだろう。
わが家を考えてみれば、大きな部屋などないので、必然的に小ぶりな作品に目が向かうようだ。会場を一回りし、結構悩んだ末に居間に飾るのにいいなと思って選んだのは、モランディの《静物》。
もし妻や娘もそれぞれ「夢の1点」を持って帰ってきたとしたら、それはちょっとした議論となって紛糾するだろう。でもどれを飾るかの前に、まずは居間の大掃除を本気でしたほうがいいんじゃないか…などなど、いろんなことが頭に浮かんでくる。
たんなる夢想にすぎないけれど、美術史的価値やら画家の知名度やらを全く気にせず、ただただ自分の好みの1点だけを本気で選んでみるこんな鑑賞法、ぜひ一度お試しあれ。
山口県立美術館学芸参与 斎藤 郁夫