今日から「扇の国、日本」展が始まる。
今も日常生活のなかで使われている扇は、千年以上も前の日本で発明された。それは凉をとる以外にも、多様な働きと意味を担わされてきたもののようだ。
たとえばご神体や仏像のなかに納められた扇。それは神仏と人とを結ぶ呪物だったという。また、日輪と月輪を表裏に描いた軍扇。総大将が扇を翻すことで日時を進め、悪日を吉日に転じさせる機能を帯びていたらしい。
個人の持ち物としての扇は、持ち主の趣味と教養が一目瞭然となってしまう装身具でもあった。しかしそれほど趣向を凝らして作られながら、はかない使い捨ての道具でもあったという。その多様な意味と機能の理解は、なかなか一筋縄ではいかない。
本展では、扇そのものの他、扇をモチーフにした絵画、着物、陶器などの作品によって、千年の間使い続けられている扇の不思議と魅力を、さまざまな角度から紹介する。
山口県立美術館副館長 斎藤 郁夫