のめり込みたいなあ、何かに夢中になりたい、と思う。キョロキョロ身辺を見回してみるが、なかなか熱中する事が見つからない。
のめり込む・夢中になる・熱中する・凝る・病み付きになる・没頭・入れ込む・かまける・熱狂・血道を上げる・虜・フェチ・御宅…等々魅力的な言葉が並んでいる。
ほかのことを全て忘れ、心がそのことだけに引き付けられる…なんという恍惚状態。心を奪われたい。
しかし、前述の言葉などにはあまり良い解釈がない。例えば、『のめり込む』の例文には『若い女にのめり込む中年男性』。『かまける』には『夫は仕事にかまけて家庭をかえりみない』とある。『入れ込む』は『競馬に入れ込む』。
健全なる精神は健全なる身体に宿る(ユウェナリス)。私は七十数年身体を使ってきたので年相応に衰えている。よってその身体に健全な精神は宿っていない。『健全』とは『心身や物事に異常や乱れがなく、安心できるよい状態である様子』。
ああ、心を奪われたい、現を抜かしたい、嵌りたい、夢見心地の日々を送りたい、何かに身を入れたい。とりあえず、庭の隅を耕して野菜を育てよう、身を入れて。剥げた塀にペンキを塗ろう、寝食を忘れて。メダカを繁殖させよう、精を出して。