「平成」時代は、バブル景気のさなかに始まり、今年4月末で終了する。その間、消費税導入、ベルリンの壁崩壊、米ソ冷戦終結、ソ連の崩壊、阪神・淡路大震災、アメリカ同時多発テロ、リーマンショック、東日本大震災など、さまざまな出来事が起きた。山口市内でも、サビエル記念聖堂の焼失・再建、JR小郡駅の新山口駅への改称、2市4町合併・新山口市誕生、ちまきや百貨店閉店などのトピックスがあった。平成の残り4カ月、そして新元号の時代、どのようなことがわれわれを待ち受けているのだろうか。新しい年を迎え、渡辺純忠山口市長に聞いた。
(聞き手/サンデー山口社長 開作真人)
昨年は「明治維新策源地」を発信
-あけましておめでとうございます。明治改元から150年の記念の年が終わりました。まず最初に、昨年の振り返りをお願いします。
渡辺 2018(平成30)年は、本市の「明治維新策源地」としての魅力を、市内外に発信する事業に取り組みました。山口県と共催した「山口ゆめ花博」には、目標の50万人を大きく上回る約137万人が来場。源泉による足湯施設や湯田温泉料飲社交組合による「蒸しふく料理」など、湯田温泉の「湯」「食」を、官民一体となってPRできました。また、歴史文化の町並みや中心市街地を一望できる亀山公園山頂広場と、幕末に維新の志士達が集った十朋亭と周辺施設を整備した「十朋亭維新館」を、ともに9月にオープンしました。
-本年度は、27年度までを計画期間とする「第二次山口市総合計画」による市政がスタートしました。今後のまちづくりについてお聞かせください。
渡辺 将来都市像を「豊かな暮らし 交流と創造のまち 山口~これが私のふるさとだ」とし、都市部も農山村も共に発展する「山口市全体の発展」を、今後10年のまちづくりにおける共通理念としました。
-具体的には?
渡辺 ①広域県央中核都市づくり②個性と安心の21地域づくり③教育・子育てなら山口④働く・起業なら山口⑤文化・スポーツ・観光なら山口⑥健康長寿のまち⑦安全安心のまち⑧市民サービス向上、これら八つの重点プロジェクトを展開していきます。①は、山口・小郡両都市核が互いに個性や特長を高めあい、高次の都市機能を集積。サービス業の振興などを図り、本市全体の発展につなげていきます。「山口・小郡都市核づくりマスタープラン」の改定も予定しています。②は、山口市内21すべての地域で「住んでみたい、住み続けたい」と思える地域づくりを進め、個性ある21の地域連合を目指します。
7市町で21年に博覧会
-2017(平成29)年3月に、宇部市、萩市、防府市、美祢市、山陽小野田市、島根県津和野町と「山口県央連携都市圏域」を形成しました。どのような取り組みを?
渡辺 中心都市の本市と宇部市が、圏域全体の経済成長を牽引。人口減少・少子高齢化社会においても、一定の圏域人口と活力ある社会経済の維持を目指します。
-「山口ゆめ回廊」という愛称や、ロゴマークも決まりました。
渡辺 圏域の一体感醸成などが目的です。今後は、中小企業の事業承継や人材確保、海外展開の支援、ビジネスマッチング、起業創業支援などに取り組みます。また21年には、7市町の圏域全体を会場とするオープンエリア型、周遊型の博覧会を開催する予定です。これは、きらら博ともゆめ花博とも異なる新しい試みで、担当者は頭をひねっているところです。さらに前年の20年には、博覧会の周知とプログラムの試験運用を兼ねたプレ博覧会も実施します。
市本庁舎や早間田交差点を整備
-市役所本庁舎の建て替え整備が、現本庁舎および中央駐車場敷地で進められます。
渡辺 「市民が集う親しみをもてる庁舎」「将来を見据えた柔軟な庁舎」「安全安心な庁舎」「亀山を臨む特徴的な立地にふさわしい庁舎」を掲げ、本年度中に基本計画を策定。来年度、基本設計に着手する予定です。
-一の坂川交通交流広場や亀山公園山頂広場等に加え、新市庁舎の整備によって「山口都市核」の“完成形”も見えてきますね。
渡辺 このエリアは、行政、文化、商業の中心となる「山口の顔」。早間田交差点も改良するなどし「人と出会える交流できるまち」「住んでいて楽しいまち」「働いて楽しいまち」を目指します。
-早間田交差点が修景整備されれば、周辺の雰囲気もガラリと変わります。
渡辺 これまでは、県道204号線によって南北が分断されているような印象がありました。もっと自由に往来でき、つながりを感じられる空間にしたいですね。
小郡と湯田をどうつなぐ?
-一方「小郡都市核」では、JR新山口駅北地区の産業交流拠点施設の基本設計が発表されました。
渡辺 交流の核となる多目的ホールは、収容能力が2000席で山口県内最大規模です。可動席を設けることで平土間としての利用もでき、コンベンション、展示会、コンサート、山口市民の活動発表など、様々な用途・規模に対応できます。パブリックビューイングやライブビューイング、他施設との連携によるセミナー同時開催なども可能に。また、やまぐち産業振興財団、山口しごとセンター、山口県福祉人材センターの移転入居も正式に決定。起業創業支援などの機能も持たせます。2019(平成31)年度当初に建築を開始し、21年度の供用開始を目指します。
-交通利便性の高い場所だけに、施設利用者が行事の終了後すぐに新幹線などで市外に移動してしまうことも懸念されています。山口市内での消費行動に結びつけるにはどうするか。
渡辺 山口市最大の宿泊拠点・湯田温泉街までをどうつなぐかがポイントですね。例えばJR山口線なら、特別車両による通常運行がされるようになれば、乗客が増えるかもしれません。
-湯田温泉駅までの所要時間はわずか20分程度ですが、駅を降りてから温泉街までが、なんとも遠い。シャトルバスなどで結ばれれば、印象も変わるのでしょうが…。
渡辺 駅舎に足湯も設置したのですが、駅に降り立っても温泉ムードはあまり感じられません。温泉街につながる道沿いの街灯の形など、工夫が必要かもしれませんね。
湯田温泉スマートICが開通
-長門湯本温泉が星野リゾートとタッグを組んで再整備を進めており、湯田温泉の強力なライバルになりそうです。その意味では、中国自動車道「湯田PA」にスマートインターチェンジ(IC)が開通するのは心強い。
渡辺 19年度末の供用開始に向け、本年度から本格的に工事に着手。吉田の市道御堀平井線と連結し、広島方面、九州方面の両側へアクセス可能なフルICになります。名称も「湯田」ではなく、観光客に認知されている「湯田温泉スマートIC」になるよう、関係各所と協議中。開通後は、交通分散による渋滞緩和、アクセス向上による周辺観光地との周遊・連携ネットワークの形成等が期待できます。加えて災害時には、高速道を代替道路に使えるようにもなります。
-では、最後に市民に向けて一言。
渡辺 今年は平成から新元号になる、歴史的にも意義深い年です。本市においても「つなぐ 未来創造」の年と位置づけ、これまでのまちづくりと未来へのまちづくりとをつなぐよう、積極的な基盤整備や事業展開を目指します。
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これまでに23人が活躍
地域おこし協力隊
-各地域で「地域おこし協力隊」の隊員が活躍中です。
渡辺 本市における受け入れは、2013(平成25)年度に阿東・徳地地域でスタート。2015(平成27)年度からは他地域にも拡大し、これまでに23人が着任しました。現在は、9人の隊員が山口市内各地で活動しています。
-これまでの代表的な取り組みは?
渡辺 「徳地手漉き和紙技術の継承、新商品開発」に取り組んだ2人は、活動を通じて徳地和紙に将来性を見いだしました。卒業後1人が和紙工房の後継者に、もう1人は新商品の開発や訪日外国人向けコンテンツづくりに携わっています。南部地域での商品開発に取り組んだ隊員は、自身の食品加工に関する専門的知識と地域の生産者・商工業者をつなげ、新商品を数多く開発。卒業後は、食の商品開発に係るコンサル業を立ち上げました。多くの隊員が卒業後も本市に定住し、自身の夢や新たなビジネス展開を目指した活動をしていること、大変うれしく、また心強く思っています。