真新しい朝の空気を少し揺らし、バイクの音がして新聞が配達される。ポストに落ちる音はいつもちょっと湿っている。一日はこの音で始まる。午前中は、どこからか犬の声が聞こえたり、車や自転車の音がせわしなくする。
昼間はとても静かで音がない。なのに先日、鳥の声が間近で聞こえた。羽音までする。庭の数本の木に鳥が来て囀ることはよくある。それにしても近い。音の聞こえる方に目をやると、部屋の中で鳥が飛んでいた。廊下の網戸が少し開いている。そこから入ったのだろうが出ることができない。部屋を飛び回り、疲れたら壁に止まる。20センチはある大きな鳥だ。あっ、燕尾服を着ている…ツバメだ。廊下の窓をすべて開け放った。しばらくして部屋に行くともうツバメはいなかった。音もなく去った。
夜、音高く風呂に湯を入れる。泡立つ入浴剤が好きでそれを入れる。泡の中に身を沈めると耳の側で泡のはじける密やかで華やかな音がする。今日ね、こんなことがあったのよ、と泡に聞かせる。
夜中、雨の音で目覚める日がある。雨音はどんなに激しく瓦や庇を叩いても私は安心して眠れる。が、風の音はいけない。吹き飛ばされて何かと何かがぶつかる音は不安だ。明朝いつもの平穏な音はなく、風景が一変しているようで眠れない。