幕末維新期の長州藩と山口市の歴史について学べる観光施設「十朋亭維新館」(山口市下竪小路)が、9月29日(土)正午にオープンする。この地で代々醤油の醸造業を営んできた萬代家から山口市に寄贈された十朋亭をはじめとする建物や土地、伝来の歴史資料等を活用しようと、2016(平成28)年秋から整備が進められていた。本館の新築および十朋亭・杉私塾・萬代家主屋・収蔵庫(蔵)の維持補修が行われ、総敷地面積は1696.61平方メートル、総事業費は約5億6700万円。
本館の入口には、江戸時代末期の歴史や長州藩における山口の戦略的位置を示す地図がパネルで紹介。展示室には「コアテーブル」「やまぐち幕末維新劇場」「北展示」「維新を陰で支えた町人たち」「十朋亭ゆかりの人物」「南展示」の6コーナーが設けられ、久坂玄瑞常用の湯呑み、伊藤博文・井上馨自作の漢詩が直筆された大杓子など、萬代家から寄贈された工芸品や歴史資料が並ぶ。
平安時代から江戸時代初期ごろまでの名筆の書状など63点が収集された山口県指定有形文化財「手鑑萬代帖」は、保護のため年に数回しか展示されない。オープンから3カ月ほどは本物だが、その後はしばらくレプリカの展示となる。本館ガイダンスゾーンでは、デジタルブックで全63作品の解読文と読み下し文、解説が読めるようになっている。
「コアテーブル」は、明治維新の策源地として山口が果たした役割を、ジオラマとプロジェクションマッピングで解説するコーナー。「やまぐち幕末維新劇場」では、専用アプリを用いて幕末期の山口をテーマにしたドラマを見ることができる。
展示室を除く本館および十朋亭、杉私塾、萬代家主屋は観覧無料。なお、オープン初日の9月29日と翌30日(日)は展示室も無料で観覧できる。開館時間は午前9時(29日は正午)から午後5時。火曜休館。
同施設のコンセプトは、①山口市における幕末・明治維新期を学べる場②大内文化特定地域における新たな回遊スポット③歴史文化のまちづくりを具体化する施設。本年度から3年間は市の直営期間として試行的な運用がされ、21年度には指定管理者制度移行を目指すという。
幕末維新期の山口の歴史や史跡の情報が満載 「十朋亭維新館AR」
AR(拡張現実)機能を用いた専用アプリケーション「十朋亭維新館AR」を利用すると、展示室内の「ARマーク」に仕込まれた、幕末維新期の山口の情報および山口市内の史跡・施設の紹介映像を見ることができる。
十朋亭内にも4カ所の“隠しAR”がある。十朋亭にゆかりのある志士と「記念撮影」ができるポイントをはじめ、複数のパターンが設定されたエリアもあり、何度でも楽しめる。タブレットの無料貸し出しもされる。
また、同アプリの「やまぐち街歩き案内」を選択すると、山口市内40カ所の史跡等の情報とそこに行くまでの経路が地図で紹介される。将来的には同施設からの所要時間も分かるようになる。