大きくあけはなたれた縁先の障子。その奥にひろがる座敷にすわっているのは小さなねこ。耳をぴんと立て、じっと外を見据える姿には、何かが起こりそうな気配が感じられます。
ページをめくると、子ねこはひとりでかけ出しました。外には危険がいっぱい。男の子につかまったり、車にひかれそうになったり。その都度何とか逃げ切りましたが、三番目に出くわしたのは大きな犬。子ねこは通せんぼする犬の鼻をひっかき、高い木のてっぺんにのぼってあらん限りの声をあげました。
それを聞きつけたのはお母さんねこ。「ふうっ!ちいっ!」と犬を追い、子ねこを助けに木の上へ一気にかけ上ります。
無事木から降り、子ねこを口にくわえてうちへ帰る母ねこの姿の堂々としていること。
そして最後は、「おおきな へやで ちいさなねこが おかあさんの おっぱいを のんでいる。」
短い文章に導かれて描かれた写実的な絵によって、どの画面もきりっと引き締まり、冒険の緊張感が伝わってきます。
(ぶどうの木代表・中村佳恵)
福音館書店
作:石井 桃子
絵:横内 襄