明木の街を後にすると、萩往還は明木川の支流、茶屋川沿いをつかず離れずといった感じで一升谷へと伸びていく。奥深い谷には樹々がうっそうと生い茂り、急登さえなければ夏でも快適なウォークが楽しめる所である。樹間を抜ける陽光がたっぷり往還に零れ落ちて思いのほか明るく、それは同時に往還沿いの小さな渓谷の水面の所々を眩しく照らす。
是非とも渓谷に降り立ってみて欲しい場所が一升谷には3か所はある。一人歩きであれば、火照った頬を流れで冷やし、近くの岩に腰を下ろして、しばしせせらぎの音に耳を傾けるのも良いだろう。しばらくすれば、きっと森の奥からニンフ達のお喋りが聞こえてくるに違いない。
文・イラスト=古谷眞之助