雪の一升谷を歩く萩往還語り部のシーンを描いてみた。明木の街からは茶屋川の渓流沿いにひたすら上りが続く。かつて旅人がキツイ上りに耐えるために煎り豆を食べながら進んでいくと、峠までに一升の豆を食い尽くしてしまったということからその名が付いたと言われている。
この谷は爽やかな渓流沿いの山歩きが楽しめることと、萩往還の特徴の一つである「石畳」が当時のままの状態で残っている(一部は復元)ことが最大の魅力である。お勧めはやはり春秋のシーズンだが、このような冬の一升谷もまた一興と言えるだろう。途中に萩の盗賊が盗んだ千両箱が今も残ると伝わる「金が浴」と呼ばれる小谷があるのも楽しい。
文・イラスト=古谷眞之助