出版不況が続く中でも、並べる本を店主が厳選する比較的小規模の“こだわりの書店”は全国各地に存在し、人気を集めている。山口県内では長門市俵山にある「ロバの本屋」が知られており、山口市内には「ブックストア松」などがある。
2019年11月、「クオリティー・オブ・ライフ(生活の質)」向上を応援しようと、“こだわりの書店”「とく選文庫」(TEL083-902-2310)が、山口日産本社内(山口市大内千坊6)にオープンした。店主を務めるのは同社の末冨喜昭会長(71)。「次世代本箱」がコンセプトで、40年以上にわたって世の中の動きを追い、経営を追求する過程で培ってきたノウハウを、本選びに注ぎ込んだ。店内には、数十万冊の中から厳選された約1500冊が並ぶ。
「情報収集力」の向上につながる「好奇心・観察・洞察力・五感・質問・取材・発見・センス」がテーマの書棚、「情報選択力」の向上につながる「選択・編集・整理・決断・デザイン・分類」がテーマの書棚、何よりも大事な「時間」がテーマの書棚、人工知能やローマ帝国など多彩なジャンルからなる「アウトプット」書棚などが設けられている。さらに、セレクト雑誌、絵本など子ども向けの本、図鑑や辞典なども並ぶ。ほとんどが購入可能だが、閲覧のみ可能な末冨さんの蔵書も一部ある。
テーブル・いす、コーヒーマシン(有料)も用意されており、本を読みながらくつろげる空間になっている。タイミングが合えば、店主とおしゃべりすることもできる。また、地元の若手作家たちを支援しようと、先日は作品の展示販売会を開催した。
店舗ロゴは、フィンランド在住のデザイナー・大田舞がデザイン
店舗のロゴは、山口県立大出身でフィンランド在住のデザイナー・大田舞がデザインした。店内には、同国のブランド「マリメッコ」の商品デザインに携わる彼女が、ロゴのアイデア出しから完成させるまでに描いたスケッチ画も資料展示されている。
「情報洪水の中で『漂流』している人たちが、より良い情報・本に出会い、感性をはぐくみ、新しい視点を発見するお手伝いができたらうれしい。特に、次世代を担う若い人たちの背中を押し、応援していきたい」と末冨さん。営業時間は午前10時から午後5時までで、水曜日定休。