頭の上にぼうしを高く積んで、町から町へと売り歩くぼうしうりがおりました。
「ぼうし! ぼうし! ひとつ50えん!」
でも誰も買ってくれません。くたびれたぼうしうりは大きな木の下でひと休み。そしてぐっすりお昼寝。
しばらくたって目覚めてみると、大切な売り物のぼうしがありません。頭の上に乗っているのは自分のぼうしだけ。ぼうしは一体どこへ?
犯人は、人まね好きなおさるたちでした。枝という枝にぼうしをかぶったおさるがいて大さわぎしているではありませんか。さて、どうやって取り返したらいいでしょうか。
どなりつけてもだめ。両手をふり回し、両足を踏みならしても、まねされるばかり。
腹立ちまぎれに自分のぼうしを地面に投げつけたところ、おさるもいっせいにまねをして、ぼうしは無事ぼうしうりのもとにもどってきました。
口ひげをはやし蝶ネクタイをしめ、大真面目な顔で頭の上にぼうしを乗せて売り歩く男とおさるの組み合わせが、何とも愉快な作品です。
(ぶどうの木代表・中村 佳恵)
福音館書店
作・絵:エズフィール・スロボドキーナ
訳:まつおか きょうこ