年に数回大阪の山田先生 からダンボール箱にぎっしりと詰め込まれた本が届く。たいてい蜜柑の空き箱が多い。山田先生は蜜柑がお好きなのかしら。
“私宛に一年間に送られてきた本です。あなたが地方で個人詩集を手に入れるのは難しいことでしょう。私は詩の批評を書いているので、皆さんが送ってくれるのです。しっかり読んで勉強して下さい。推薦本には二重丸がついています。忙しくてもその本だけは読んで下さい。最後の本の処分はお任せします”
箱は玉手箱のようにいろんな世界を私に見せてくれた。有名な誰でも知っている詩人の本はあまりなく無名の市井の詩人達の本が多く詰まっている。それが絶品なのだ。だからその人の別の本も読みたくなってくる。 “あなた様の詩集が読みたいのです” 遠く高知の詩人に、伊勢の人に秋田の人に、日本中の詩人に手紙を書く。数日すると、お願いしていた本が届く。いそいそとお礼の手紙と本代、一緒に山口の名産を送る。
私もまた、ダンボール箱に本を詰めて友人に送る。“読み終えたら高村さんに送ってね”。こんな具合に夫々の心になにがしかのモノを落としながら本は巡っていく。私達は年数回集合して、煎餅を食べながら本が落としていったモノのこと、病気の話と年金の話なんぞをする。