今週になって山口県内でも感染症患者が確認された新型コロナウイルス。感染拡大防止のため、全国的に臨時休校や外出自粛の動きが広がる中、無観客でのプロスポーツ競技が開催されるなどの「異常事態」が続いている。山口市内にどのような影響が生じているのか、探ってみた。
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、政府がまず打ち出したのが学校の一斉休校だ。山口市立の小中学校は3月26日(木)まで臨時休校となり、市内に51ある放課後児童クラブ(学童保育)の多くが夏休み同様の時間に開設。3月9日(月)からは、すべてで終日(午前8時半~午後6時)受け入れ可能となる。一方、高校の臨時休校は、県鴻城高が3月18日(水)までで、山口高、山口中央高、山口農高、中村女子高、野田学園高が3月19日(木)まで。3月2日から休校が続く山口高の1年生に聞くと「学年末テストは終わっていたが、返却はまだ途中。自分の成績がどうなるのか、春休みが登校日に置き換わるのかなどの情報もない。部活もできず、自主練習のみをやっており不安」とこぼした。
大内千坊の大型ショッピングセンター・ゆめタウン山口では、先週からレトルト食品、米、カップ麺など、日持ちがするものがよく売れており、先週末は通常の3割増しだったという。また、買い物客と従業員、双方のことを考え、テナントの営業時間を午前11時から午後8時まで短縮している(3月15日まで)。
市内にある県・市が管理する施設は、多くが臨時休館に。不特定多数の人が集まる催しも、軒並み開催が見合わされている。3月31日(火)までに予定されていた山口市主催のイベント・行事は、原則中止または延期とされた。さらに、今年で45回目になるはずだった毎年春恒例の「生協まつり」(コープやまぐち)や、3月26日(木)から予定されていた「春の北海道物産展」(山口井筒屋)といった民間企業による催しも中止。3月1日に予定していた定期演奏会を中止した山口大吹奏楽部の部員は「現3年生は引退し、有志の4年生も卒業する『最後の演奏会』だったので、とても残念」と肩を落とす。山口商工会議所の議員総会(3月24日)は、毎年開催していた会議後の懇親会を中止に。山口青年会議所も、4月11日(土)に予定していた創立65周年記念式典の延期を決めた。
外出の手控えは、観光業にとって特にダメージが大きい。湯田温泉旅館協同組合の吉本康治事務局長の取りまとめ(3月3日)によると、加盟する16施設を合わせて、約1万5000人が宿泊をキャンセル。1人当たりの宿泊料金を仮に8000円とすると、損失額は約1億2000万円に上る。3月だけにとどまらず、4月のキャンセルも出てきており、対策は急務。念願かない、ようやく3月21日(土)に「湯田温泉スマートインターチェンジ」が開通するが、冷や水を浴びせられた格好だ。「朝食バイキングを(衛生的な)定食に変更したり、ビジネスホテルへの宿泊客に安全な場所での夕食を提供できるようにするなど、湯田温泉街全体で一致団結して、何らかの手を打たないと」と吉本さん。
山口観光コンベンション協会によると、3月に誘致したスポーツ大会やフォーラムなどは、6件すべてが中止に。参加予定者は約1500人で、宿泊者は約1200人を見込んでいた。4月からの来年度には76件を誘致しているが、先が見えず具体的な動きもとれないのだという。平素は団体などでにぎわう瑠璃光寺も、現在訪れているのはほぼ個人客。山口市観光ボランティアガイドの会の森文子会長は「こんな時だからこそ、より一層のおもてなしをしたい」と話している。
3月は歓送迎会シーズンだが、自粛する動きが広がっている。だが、その一方で「度を過ぎた自粛は、経済を必要以上に萎縮させる」と、危惧する声も少なくない。山口市内のある社長は「こういう時だからこそ、何もかもを自粛ではなく、人とお金を動かさないと。できるだけ、地元のお店を利用していきたい」と力を込める。先日、「普段は予約すらなかなかできないお店に、直接行って入ることができた」そうで、お店側も「キャンセルは入ってくるが、逆に本来なら来店しなかったはずの人にも来てもらえる」と、前向きにとらえていたという。
とはいえ、急速な売り上げ減少等により、事業活動に支障を来すケースも出てきている。萩山口信用金庫(TEL083-902-2731)は、資金繰り等に影響を受けた法人・個人事業主に向け、休業日に特別相談窓口を開設。3月7日・14日・21日・28日の土曜日に、湯田支店(山口市湯田温泉3)と萩支店(萩市唐樋町3)に設ける。