朝は一日の内で一番忙しい。私は、早朝四時に起床し、すぐに着替えをする。が、股関節の動きが鈍いので、靴下を履くのに左右の足をよいこらしょ、と引っ張りあげる。五本指のそれを穿くには五分はかかる。寒がりなのでズボンを二枚穿く。上半身も三枚は着る。首に猫模様の首巻をして毛糸の帽子を被る。すぐに外に出て、足をトントン踏みならし、地球よ、お早う。空を見上げ、宇宙よ、お早う。なんて意味不明のことをしていると一時間はゆうに経つ。洗面しながら洗濯機を回し、洗濯物を真っ暗の庭に干す。白い下着が明けきらない冬空に気味悪く翻る。もうすぐ太陽が昇るからねって言い聞かせる。これで一日の私の家事は終了。食事はあり合わせをかき込む。掃除はゴミが落ちていれば拾う。
珈琲カップを持っていそいそと部屋に入る。推理小説の続きを読まねばならない。探偵が、私利私欲の為に地球を破壊しようとする犯人をもうすぐ追い詰める。場所は、世界各国。各地で経済、宗教、エネルギーの奪い合い等の争いの火柱が上がる。真実を暴け。日の出を拝み平和を望み、勤勉に働く庶民のために。行け! 戦争なんて望む庶民はいない。地球を守れ。ウルトラマンのような探偵に声援を送る。だから早起きしなければならない。地球がかかっているのだもの…。私だって。