12年前に国立西洋美術館でハマスホイの個展が開かれたとき、私はこの作家のことを知らなかった。東京ではこの展覧会の話題で持ち切りだった。あとでカタログを見て、観に行かなかったことを後悔した。そのハマスホイが再び日本にやってくる。しかも山口にやってくる。
今回の展覧会では、ハマスホイの母国デンマークの同時代の作家たちも紹介される。きっと彼の静謐な画面が際立って見えてくるのだろう。
ハマスホイは没後、抽象絵画や表現主義が新しい美術としてもてはやされる時代のなかで、旧い画家として忘れ去られていったという。しかし美術の流行り廃りという浮き沈みを潜り抜けて、なおも輝きを失わずに現代の私たちの目に届く作品、そういうものが真の名作なのだろうと思う。
チラシを眺めていると、意外にもハマスホイの画面が“ざわついている”ようにも感じられるのだが、本当だろうか。はやくこの目で確かめてみたい。
山口県立美術館学芸参与 斎藤 郁夫