2月26日の“おんなの目”に“不思議だなあ”を書いたが、やっぱり裸になるたびに身体が不思議でたまらない。
顔 松下育男
こいびとの顔を見た//ひふがあって/裂けたり/でっぱったりで/にんげんとしては美しいが/いきものとしてはきもちわるい//こいびとの顔を見た/これと/結婚する//帰り/すれ違う人たちの顔を/つぎつぎ見た//どれもひふがあって/みんなきちんと裂けたり/でっぱったりで//これらと/世の中 やってゆく//帰って/泣いた
(詩集「肴」より)
松下氏は第二十九回H氏賞受賞。
歯止め 松下育男
てのひらを見て/思う//ここも/うまいぐあいに歯止めがきいている//指はてのひらが五本に裂けて/途中で肉の/歯止めが/きいて/いるが/この歯止めがなく/ずっと/肩のつけねまで/裂けつづけていたらと/思う/君へちからをこめることは/もうない(後略)
身体って不思議だなあ。裸の身体を見ていると、古い盲腸の傷跡をもう一度切り開きそこから、くるりと蝉のように脱皮できそうだ。新しいピカピカの私が出てくる。それも気味悪いなあ。今のままでいい。今日は身体を念入りに洗ってやろう、と石鹸を盛大に泡立てると、乳房も秘所も静まり返って愛想もない。