“後ろから見た女性”。黒い服のあなたに会いたい。“室内、コペンハーゲン、ストランゲーゼ30番地”。音のない部屋のその椅子に座らせてほしい。
「ハマスホイとデンマーク絵画」展が山口県立美術館で開かれると知ったときから、もう一年近く待っていた。やっと私の近くまで訪れてくれたのに。新型コロナウイルス感染症の拡大防止のために、あなたはそこに居るのに、見ることが出来ない。
今は誰もいない山口県立美術館の広い部屋の壁に作品は並んでいるのでしょう。誰もいない音のない美術館に静かな絵。もしかしたら、ハマスホイの絵の展示の場としては最高かもしれない…でも、会いたい。黒と白と灰色の世界。私には薄い紫色も感じられる。キリリとした静謐さ、大きく息を吸い込んで呼吸を止めて、少し肺が痛くなるような見つめ方をしたい。会期は、6月7日まである。自宅でネット検索して、開放されている展示作品を見ることにしよう。
この時期、観覧できない美術作品が世界中に沢山あることだろう。山にある美術館、海辺の館、都会のそれ等、美術館には静かな時が流れ、絵画も彫刻も工芸作品も私達に会える日を待ってくれている。彼らは消えない。今は出かけることはできない。人と接触してはいけない。命に係わる。