最近の展覧会カタログはデザインに凝ったものが多い。このカタログも瀟洒な姿に仕上げられている。展覧会の開幕は延期されたままだが、カタログは通販で購入することができる。
快適な椅子でくつろぎながらカタログのページをパラパラ眺めていると、好きなだけ見ていられるので、思いもよらぬイメージとつながっていくこともある。
たとえば、壁面の額のガラスに夕陽の色が反射している様が描かれているのを見て、ふと、子供のころ夕方一人きりで家にいたときの光景が蘇ってきたり、地平線上に白く輝く雲が描かれているのを見て、冬の関東平野を走る電車の窓からずっと見えていた上越国境の山なみを思い出したり…
実際、展覧会場の人混みのなかで集中して絵を見つめているとき、はたして、こんなイメージが心に浮かんでくるだろうか。もちろん実物を見るのが一番である。でも、カタログを気ままに眺める楽しみも捨てがたい、と思うのである。
山口県立美術館学芸参与 斎藤 郁夫