地区の当番が回ってきて「市報」を各戸に配ることになった。古い家のポストは、郵便物の差込口が上についた箱型の赤いもので見ればそれとすぐわかる。が、ここ五年くらいの間に建てられた家のポストは、斬新過ぎてポストなのかオブジェなのかわからない。
約縦六十センチ、横三十センチで真ん中に一本線が入っている真鍮(?)の筆箱のような物が玄関脇に取り付けてある。これはポストだと思ったが、家自体が真っ黒の造りで窓も小さくモダンなので前衛的なオブジェかもしれない。恐る恐る真ん中の線の所を押してみた。二センチ開いた。ここが差込口らしい。市報を半分に折って差し込んだ。
そのお隣さんは、高さ約九十センチ直径六十センチくらいの円柱が切り株の上に置いてある。玄関脇に置いてあるのでポストだと思ったが、差込口がわからない。全方位から物体を眺めて、上の蓋のような箇所を引っ張った。開いた。これポストだよね?
次の家は、厚み三センチ、一辺六十センチくらいの正方形の金属が玄関の扉についている。不安だったけれどポストだと推理して、上下左右から市報を差し込んでみたがどこからも入らない。仕方がないので玄関の前に石を重しにして市報を置いてきた。石と紙。風で市報の端がめくれ、美が生まれる。すばらしいオブジェだ。
ポストは機能第一として欲しい。