石風呂というと東大寺を再建した重源上人が設けたという徳地のそれが有名だが、日南瀬の休憩所には復元された石風呂がある。これは花崗岩で作られ、エスキモーの氷の家・イグルーに似ていて本物とはほど遠い。一方、日南瀬バス停近くには、かつて使用されていた本物が現在でも残っている。イラストはその本物を描いたものである。
かつては、中で火を燃やして底の石を焼き、そこに萩の海岸から運んだ海藻を敷いて体を横たえたと伝えられる。つまり、現在のサウナに近いものと考えて良いだろう。もちろん、萩往還の旅人のためのものではなく、日南瀬付近の農民の憩いのために造られたものだった。
文・イラスト=古谷眞之助