蒼い額紫陽花は、首飾りのような額から枯れていくのを今年初めて知りました。それも蒼色が抜け白くなり、その中に薄い血の色を滲ませながら、淡い粒のような中心の小花を守るように俯き枯れていくのですね。
ときおり、覗き込むようにやってくる小鳥のせわしない羽にあおられて、ふっと花は上向きますが、小鳥が去ると一段と赤く染まり乾いていく。触ると紙のような感触でした。こんなに雨が多い七月だから地中には水分がたっぷりとあるだろうに、もう吸い上げる力がないのでしょうか。
何でも最後は乾くのです。人気のない家の壁は乾いて日々崩れていく。窓枠も歪み大きな暗い穴のような口を開けたままになり、崩れていく。
乾くといえば、私はすぐにミイラを連想します。ミイラには二つの形がある。天然的ミイラと人工的ミイラ。調べてみたら、天然的ミイラは土地の乾燥や空気の乾燥、鉱物的成分、寒冷のために死体が自然に凝固したものだそうです。人工的ミイラは主として宗教上の信仰から死体に加工して腐敗を防止したものです。ミイラをノックすると、カンカンと乾いた音がすることでしょう。
強い雨に打たれ続けた今年の額紫陽花の命は短かった。一本の終わろうとしている額紫陽花を高く掲げて、さようなら、七月。