芥川賞受賞作「首里の馬」(高山羽根子著)を読んだ。中に「沖縄及島嶼資料館」。沖縄の雑多な情報の詰まった資料館のことが書かれてあった。ここはお婆さんの経営。また、ある風の強い日、馬が現われる。のんびりとした「宮古馬」(ナークー)。
島の忘れられたような資料館とお婆さんと島の馬。既視感がある。「国境」(朝比奈敦著)だ。蒼い海の色の「国境」の頁をめくる。舞台は沖縄の近くの島だ。「島の博物館」と墨書された古びた館。小峰婆さんの私設博物館。また、馬には島の果ての海辺で出会う。馬を見ながらじっと座り込む。
朝比奈氏は、1993年に山口県芸術文化振興奨励賞を受賞。2001年に第9回神戸ナビール文学賞受賞。2007年「国境」が同年文学界下半期同人雑誌優秀賞となり同作で芥川賞候補となる。期待の作家であった。彼は2015年、永眠。
「国境」を再び読むと、すべての文章が私の細胞に染み入ってくる。13年前、最初に読んだ時、私はわかっていなかったのではないか、良い読者でなかったかもしれないと悔まれる。私は年を重ね賢くなった。彼の世界が少し見えてきた気がする。教えを請いたい。訊ねたいこともある。死が惜しまれてならない。県内の同人誌も少なくなった。朝比奈氏に続く書き手を待っている。