本が二十冊、狭い部屋の出窓の前に積み上っている。唯一気持ち良い風の入る窓なのだが本があって遮られる。こんなことになってしまった犯人は荒川洋治氏(詩人)だ。氏の『忘れられる過去』という本を友人に薦められて、インターネット上の書籍販売で買ったからだ。インターネットに繋げたパソコンで家にいながら、キーを一つ押すだけで簡単に注文ができる。古本であれば一円の本もある。郵送料はいるが家に届けてくれる。誰にも会わずに言葉一つ掛け合わないで手にできる。
『忘れられる過去』は、氏の読書歴にまつわるエッセイなのだ。文章は巧みで紹介された本はすべて読みたくなる。キーをポンと叩いて買う。
暑さが身に堪える。外に出たくない。陽が落ちて古本屋に行ったら、人が多くて入るのがためらわれた。もちろん町の本屋で買うこともある。が、いつもいつも新刊は買えない。作家が命をけずり書いた本。私の乾いた心に慈雨を降らせる、そんな本を安く手に入れることには抵抗があるが、沢山読みたいという勝手な理由であるが許して欲しい。私は読むのが遅い。本はたまる。“積読こそが完全な読書である”(永田希著)を買った。帯に『読まずに積んでいい。むしろそれこそが読書だ』とある。判じ物のような惹句であるが、さてさて、いつ読めるかな。