今、人と人の間のディスタンス(距離)が問題になっている。「ソーシャル・ディスタンス」ということで、今までとは違った距離感が生まれているようだ。ものごとの間の距離が変わることで、作品の見え方も変わるかどうか――そんな試みの展覧会が15日から始まった。
6つのテーマごとに、彫刻と写真や絵画が組み合わされている。たとえば「East&West」。東洋と西洋の間のディスタンス、それは縮まったのか、それとも広がっているのか。展示してある《ゆあみ》と《沐浴の前》の間、それは「近い」のか、それとも「遠い」のか…そんなことを考えながら、広い展示室をゆっくり歩き回り、いろいろな方向から作品を見回してみる。
一度は見たことのある作品ばかり。でも、もう一度見ると、私と作品の間のディスタンスは以前よりも小さくなるか、大きくなるか…。作品の経験はそのつど異なって当たり前、ということを実感してほしい展示である。
山口県立美術館学芸参与 斎藤 郁夫