“過去の病気”との認識が、受診・診断の遅れにつながり、周囲の人々に広まる集団感染が現代でも起こっている結核。まずは結核について正しく知り、予防についてこの機会に考えてみよう。
結核とは、結核菌によって主に肺に炎症が起こる病気で、最初は風邪に似た症状で始まる。タンのからむ咳が2週間以上続いている▽微熱・身体のだるさが2週間以上続いている−といった状態があてはまる場合には、早めに医療機関などを受診しよう。
なお、新型コロナウイルスも呼吸器疾患で、咳や息切れなどを伴い、発熱や全身倦怠を起こすが、結核との最大の違いは発症のスピードだ。発症する場合、結核は徐々に数週間以上もかけて発症していくが、新型コロナウイルスは感染後数日以内に発症する。
2018年の結核新登録患者数は、前年に比べて全国で1199人、山口県では11人減少した(表参照)。その一方で近年、かつて結核が国民病だった時代に罹患した人が、高齢化による免疫力の低下に伴い発症する例が多くみられる。実際、新登録結核患者のうち3人に1人が80歳以上だ。さらに高齢者は結核診断が遅れる傾向があるため、すでに結核菌に感染した人からの発病をなるべく早期に発見することが重要となる。
また、外国生まれの新登録患者数は増加傾向が続いている。特に若年層(20~29歳)では、半数以上の70.4%を外国出生患者が占めている。国では、長中期で滞在する外国人を対象とした入国前スクリーニングの導入に向けて、準備が進められている。
2018年の新登録肺結核患者のうち、イソニアジドとリファンピシン両剤に耐性のある多剤性結核は55人で、薬剤感受性検査結果が判明した肺結核患者の0.7%にあたる。多剤性結核55人のうち、日本出生患者は26人、外国出生患者は29人で、その割合は日本出生患者0.4%に対し、外国出生患者は4.1%となっている。
厚生労働省では毎年9月24日~30日を「結核予防週間」と定め、結核に関する正しい知識の普及啓発を図っている。結核予防会では、全国各地で街頭募金や無料結核検診、健康相談等を実施して、結核予防の大切さを伝えている。結核菌を含めた様々な感染症に対する抵抗力をつけるためには、バランスのとれた食生活、十分な睡眠休養、適度な運動、ストレスをためないことが大切だ。また、定期的(年に1回)に胸部レントゲン検査を受けよう。