腹をなめる牛は 牡牛を産む/はらのなかで元気に動くので そういうのだ/なめた毛肌が 波うってみえる//母牛は 産み落とした子牛の乳糞をなめる/排尿もなめる/そのときみせる フレーメン(後略)。『詩集竹内正企著・定本牛・毛球より』
フレーメンとは、“排尿をなめ、唇を尖らせる愛の動作”と注がある。子の乳糞、排尿をなめとることは、愛の動作なのだ。母牛の厚い唇の形とよく動く長い舌を想像した。
数日後、『けんちん汁を食べてってください』という詩に出会った。作者はわからない。 (前略)おばあさんがついに現れ/目のまえに/けんちん汁が差し出された/新幹線の先端のような表情で//ふうふう 食べた おいしかった(後略)
新幹線の先端のような表情。これは唇をとがらせる形だ。新幹線の先端のモデルはカモノハシの嘴と聞いた。カモノハシは哺乳類。ふ化した子は母乳を唇をとがらせて吸う。愛の動作で成長していく。
温かいけんちん汁を唇をとんがらせてふうふうと息を吹きかけながら食べる。友達と笑いながら食べる。口を突き出す行為は幸せの形なのだ。
今日の夕餉は、唇をとがらせ、ふうふうと息を吐き、汁をすすろう。