2019年の厚生労働省「国民健康・栄養調査」によると、糖尿病が強く疑われる成人の割合は男性19.7%、女性10.8%と、この10年間で最も高かった。11月9日(月)から15日(日)は「全国糖尿病週間」。この機会に糖尿病についての認識を深め、紙面掲載の医療機関も参考に、予防および早期発見・早期治療を心がけよう。
糖尿病は、重症化するまでほとんど自覚症状がなく、気づいたときには合併症が進行している恐ろしい病気。手遅れになると失明、人工透析、足の切断などを余儀なくされるケースもある。
また、糖尿病患者が新型コロナウイルス感染症に罹患した場合、重症化しやすい傾向が指摘されている。肥満があると体内で炎症が起こりやすくなり、免疫力が低下する恐れがある。予防・早期発見のために定期的な健診を受け、もし糖尿病と診断された場合、重症化しないためにも普段の血糖コントロールを良好に保つことが重要だ。
生活習慣の見直しと筋力アップを
新型コロナウイルス感染拡大防止による自粛活動で、生活習慣が変化した人も多いのでは。日本人の糖尿病患者の95%は2型糖尿病といわれ、食べ過ぎや運動不足、ストレスなどの環境要因が重要な要素となる。日本人のインスリンを分泌する能力は欧米人に比べて低く、軽度の肥満でも糖尿病になりやすい。生活習慣を見直し、血糖値の改善を心がけよう。
また、今年の「全国糖尿病週間」の標語は「筋肉量 コツコツ積み上げ健康長寿」。筋肉量が少ないと食後に十分な量のブドウ糖が筋肉に取り込めず、インスリンの働きが低下し高血糖を起こしやすい。「貯筋」にも意識的に取り組もう。
糖尿病予防には
朝・昼・晩の3食をきちんと取り、食べすぎには注意する。野菜や海藻などの食物繊維を積極的に摂取することなどを意識すると良い。運動を習慣化することも効果的。ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動を少しずつでも毎日続けることで、インスリンの働きをよくし、基礎代謝エネルギー量を上げることができる。
今年のテーマは「サルコペニア・フレイル」
日本糖尿病学会による調査(2001年~10年)では、糖尿病患者の平均年齢は男性71.4歳、女性75.1歳と、そのまえの10年間に比べ、それぞれ3.4歳、3.5歳延びている。
同学会と日本糖尿病協会が共催する「全国糖尿病週間」では、2018年からのテーマ「サルコペニア」に2019年からは「フレイル」も加え、高齢者の糖尿病対策を促進している。
サルコペニアとは
加齢や疾患により筋肉量が減少して、筋力および身体機能の低下をきたす状態のこと。健康や生活に大きな影響を与え、転倒などのリスクの増加、日常生活の活動性の低下、動脈硬化の進行に伴う心筋梗塞や脳卒中などのリスクがあり、最終的には死亡率の上昇につながる。
フレイルとは
加齢に伴い、心身の活力(社会とのつながり、認知機能、筋力など)が減退し、ストレスに対する回復力が低下した状態を指す。健常から要介護に移行する中間の段階といわれ、適切な対策・支援を行うことで予防や回復が可能。
フレイルによりサルコペニアがさらに進行するなど、関連して悪循環に陥る可能性もある。予防には、慢性疾患がある場合は医療機関を受診し、適度な運動、たんぱく質やカルシウムを含むバランスの良い食事、感染症対策、口腔ケアなどを心がけよう。また、外出や社会活動参加による人との交流も効果的だ。