2020年4月に創立10周年を迎えた「明日を紡ぐ大地の会」(福島光子代表、TEL083-921-2476)が主催する「市民みんなの文化祭」が、11月22日(日)午後1時半からニューメディアプラザ山口(山口市熊野町1)で開かれる。サンデー山口など後援。
これは、異なるジャンルの文化・芸術活動に取り組む団体・個人による合同発表会。今回は、同会を含め6団体が出演する。
Ototumugiサクソフォン・アンサンブルは、山口県内の中学・高校に通う同団体のジュニアメンバー4人が「アメイジンググレイス」など3曲を演奏。ハモールカは「栄冠は君に輝く」「夢路より」「あざみの歌」「高校三年生」などをハーモニカで情感豊かに奏でる。中南米音楽演奏家・平尾節幸さんは伝承曲の「二羽の小鳩」、ペルーの「風のおどり」、ボリビアの「グアダルキビール」、ペルーの「コンドルは飛んで行く」を披露。ギター合奏の「フレンズ」と大正琴・マンドリンの「ゆずっこ」による合同グループ・フレンズ&ゆずっこは、が「高原列車は行く」「ポールモーリア・メドレー」「北の宿から」などを演奏する。花柳流「むつみ会」は長唄「雨の五郎」「元禄花見踊り」を踊る。
そして、主催の「明日を紡ぐ大地の会」は、山口ゆかりの作家・国木田独歩の「富岡先生」を朗読劇で上演する。原作は、吉田松陰に傾倒した21歳の独歩が実際に富永有隣を訪問し、その逸話や晩年の境遇などに着想を得て10年後に発表した短編小説。長州藩士として明治維新で活躍するも没落した老漢学者・富岡先生の心の機微と、かつての教え子たちと一人娘の結婚話をめぐる悲喜劇が描かれる。
同会の福島久嘉さんは「出演者それぞれがコロナ禍による試練や葛藤を乗り越え、『みんなの文化祭』をそろって開催できることが大変うれしい。朗読劇では、没落の悲哀と過去への哀惜を表現すると同時に、将来の日本を担う無名な若者の姿を静かに、はつらつと登場させる。国木田独歩が開拓した“日本民衆文学の源流”を楽しんでほしい」と話している。
チケットは大人1000円で、高校生以下は無料。山口市内プレイガイドで購入できる。なお、来場の際はマスク着用への協力が呼びかけられている。
千葉県で生まれた国木田独歩(1871-1908)は、裁判所書記官の父親の転勤に伴い幼いころから広島県と山口県内を転住。山口市では12歳から16歳まで暮らし、今道小(現白石小)、山口中(同山口高)に在籍した。東京専門学校中退後の数年間は田布施町と柳井市で過ごし、教師、新聞記者などを経て作家に転身。優れた観察眼で自然美と人間の内面を描き出し、田山花袋、石川啄木、芥川龍之介など同年代の作家にも高く評価された。近代社会から取り残されたような名もない民衆の視点に立った作風が特徴。自然を賛美したイギリスの詩人・ワーズワースの思想にも影響を受け、「置土産」「少年の悲哀」「酒中日記」など山口の情景が登場する作品も多く残る。