友達と楽しくおしゃべりして帰宅して独りになると、私は反省し始める。私の今日の底の浅いおしゃべりを思い起こして落ち込む。友達は皆賢くて聡明であった。与太話の中にも生活の知恵が見える。彼や彼女たちはどうしてそういう賢さを身につけたのだろうか?『口耳の間は則ち四寸のみ、曷ぞ以て七尺の軀を美とするに足らんや』
Aさんが私によく言った言葉だ。意味は−口と耳とはわずかしか離れていない。耳から入ったものをそのまま口から出す。浅はかな「口耳の学」であっては、どうして人の七尺の体をすぐれたものにすることができようか。
私は、情報はテレビかラジオが多いので、耳から入ったことは口からすぐ出してしまう。覗き見的な情報は面白いのである…帰宅して反省する。七十三歳になってもこんな節度のない者なのかと滅入ってしまう。そういう心境をAさんに話したら、何やら沢山書き込んである分厚い手帳をだしてその中から、私に次のような言葉を選んで励ましてくれた。『前事の忘れざるは、後事の師なり』意味は−前にあったことを忘れないで心に留めておけば、後に物事を処理するときによい手本となる。
前にあったことを忘れるんです!反省しても二度三度と繰り返す。模範とする友人の姿はあるのに…私、ずっとこのままなのかしら?