伝統的工芸品大内塗振興に関して顕著な功労があったとして先月、経済産業大臣表彰を受けた。「ちょうど70歳という節目にいただき、これからも一生懸命続けていきたい」と話す。
現在、大内塗の工房はわずか5軒。「後継者が少ない世界だが、多くの人にその良さを伝えたい」と、工房のある山口ふるさと伝承総合センターで製作の傍ら塗り物教室を開き、子どもたちの体験学習も受け入れている。コロナ禍で修学旅行が中止になった高校からの問い合わせも多く、1日に3校の生徒に教える日もあるという。
大内塗の醍醐味は「塗り重ねるごとに美しく仕上がること」。特に大内人形は「最後に目を描き入れると『モノ』から『この子』に変わる。一筆で一生の顔が決まるので責任は大きい。売れる時はうれしい反面寂しくもある」と思いを語る。
【プロフィル】1950年10月、竪小路生まれ・在住の70歳。大殿小・中、野田学園高から明治学院大へ。卒業後、父・冨田勲さんの後を継ぎ、冨田大内塗3代目となる。大内塗唯一の伝統工芸士で大内塗漆器振興協同組合理事長。2015年に山口県文化功労賞を受けた。