ファンタジー作家の巨匠トールキンは、長男が三歳のときサンタクロースについて質問され、それをきっかけに毎年サンタになりすまして四人の子どもたちに絵手紙を送り続けました。最初の手紙を書いたのは一九二〇年。以来二十年以上、子どもたちはクリスマスのたびに手紙を心待ちにしていました。
手紙の封筒には北極の切手がはられ、雪のしみあともあり、字は寒さのためにふるえています。受けとった子どもたちは、それをサンタが書いたものだと信じきっていたことでしょう。
書面には、サンタとその助手をつとめるちょっとそそっかしい白熊が、時にトラブルを起こしながらも世界中の子どもたちのためにプレゼントを準備する様子が、ユーモアたっぷりの絵とともに書かれています。年を追うごとに登場人物が増え、まるで一編のファンタジー作品を読んでいるような気がします。
手紙を本の形にしたのは息子の妻のベイリー。第二次世界大戦に向かう厳しい時代をファンタジーの力で生きぬいた家族の姿が凝縮された作品です。
(ぶどうの木代表 中村 佳恵)
評論社
作:J・R・R・トールキン
訳:瀬田 貞二/田中 明子