雪舟の国宝《四季山水図(山水長巻)》は毛利博物館で12月21日(月)まで公開されているが、当館ではこの作品を大きなパノラマ画像で楽しめる。
最初、坂道を登ってゆく人物が現れる。これから歩いてゆくはずの道が、展開する風景のなかに見え隠れする。椅子に座って動いてゆく映像を眺めていると、去ってゆく場面や光景にも名残惜しいような気分が生まれ、すっかり絵の世界に入り込んでいることに気付く。
家屋の窓に見える人物が気になる。きっと書物を読んでいるのだろう。広々とした湖の対岸に橋が見えてくる。通り雨も見えて、思わず目をこらす。
大きな城壁と建物が現れると、もう人の姿は見えない。そして、城壁を隠す大きな岩の下を坂道がっ下ってくると、ぷつりと絵が終わる。ここで旅はおしまい。
最後の傾いた一本の樹。これは画巻の最初に描かれたものと同じ種類だという。再び旅が始まることを示すのか。印象的なラストである。
山口県立美術館学芸参与 斎藤 郁夫