新型コロナウイルス感染拡大の影響で、長期の試合中断、無観客試合や入場制限、「J1へは自動昇格2枠・J3への降格はなし」という特例ルールの適用など、異例尽くしとなった2020年シーズン。若手を育てながら理想のサッカーを追求したレノファ山口FCの戦績は、9勝6分27敗、勝ち点33の最下位と、J1への道の険しさを痛感させられた年となった。
この特集では、昨季の戦績をはじめ、ホーム戦現地観戦環境の変遷やコロナ禍における取り組みを、応援企業の熱い思いとともにお届け。まずは過密日程で駆け抜けた5年目のJ2シーズンを、10試合ごとに振り返ってみたい。
1~10節(2月23日~8月8日)
開幕戦(京都サンガF.C.戦)はキャプテン#10池上丈二選手の先制点を守り切り白星発進。新型コロナウイルス感染拡大の影響から、約4カ月の中断を経てリモートマッチ(無観客試合)での再開となった第2節(ファジアーノ岡山戦)は、#9イウリ選手の初ゴールなどで2点を奪うも後半に追いつかれドローに。
3連敗を挟んで迎えた第6節(FC琉球戦)では攻守がかみ合い、ホームに駆け付けたサポーターにシーズン再開後の初勝利を届けた。第7節(ギラヴァンツ北九州戦)はチャンスを作りながらも無得点の黒星。
第8節(V・ファーレン長崎戦)では、#38河野孝汰選手のJ2リーグ戦最年少得点記録となるプロ初ゴールで一度は同点に追いついたものの3分後に決勝点を奪われて惜敗と、第7節以降ドローを挟んで勝ちなし。10試合終了時点で2勝2分6敗の厳しい滑り出しとなった。
11~20節(8月12日~9月19日)
第12節(大宮アルディージャ戦)は#16浮田健誠選手が値千金のゴールを挙げ、約1カ月ぶりの白星を飾った。勢いには乗り切れず、第14節(FC町田ゼルビア戦)はセットプレーから先制され、後半の立ち上がりにも追加点を許す一方、攻撃では決定機をことごとく逃して完敗。チームは最下位に転落した。
以降もドロー2試合を挟んで白星ゼロと低迷。しかし第20節(東京ヴェルディ戦)では序盤から攻め合い、前半をスコアレスで折り返すと#7田中パウロ淳一選手のクロスを受けて#16浮田選手が続けざまに2ゴールを奪い、#17吉満大介選手がPKを阻止して逃げ切りに成功。猛追をしのぎ8戦ぶりの勝利を手にするとともに、ついに浮上の兆しが見えた一戦となった。
J 2試合連続同点弾を決めた#9イウリ選手(第25節・26節)
勢いはあるが浮き沈みも激しく、5試合ぶりのホーム戦となった第28節(徳島ヴォルティス戦)は、前半こそ善戦したものの上位チームの技術や体力の違いを見せつけられ、3失点の完封負け。順位も21位に後退した。
第29節(水戸ホーリーホック戦)は5連戦の最後を飾るホーム戦。この試合から再開された鳴り物(一部)の応援が響く中、序盤から2失点および#30へニキ選手の退場と厳しい戦況に。後半に#7田中パ選手がPKを決めて1点差に追いつくもゲームの流れを引き込むには至らず、息の合った猛攻に押されて1-4の黒星を喫した。
第30節(松本山雅FC戦)は開始7分で2失点と再び序盤から苦しい展開。#11高井選手のゴールで1点差に詰め寄ったものの鉄壁の守備を崩しきれず、3試合連続の複数失点による3連敗となった。
31~42節(11月4日~12月20日)
第31節(ザスパクサツ群馬戦)は#4サンドロ選手が先制。一瞬の隙を突かれてドローに持ち込まれはしたが、4試合ぶりに勝ち点を積み上げた。第32節(FC琉球戦)、第33節(FC町田ゼルビア戦)、第34節(アビスパ福岡戦)は3試合連続無得点での黒星。順位も再び最下位に。
第35節(東京ヴェルディ戦)は#11高井選手が古巣相手にPKを決め、第36節(ジェフユナイテッド千葉戦)は#9イウリ選手のゴールで、それぞれ一度は同点に追いついたが、いずれも攻め切れず1-2で接戦を落とした。
第37節(栃木SC戦)、第38節(ヴァンフォーレ甲府戦)では序盤から激しい攻防戦を繰り広げ、いずれも前半はスコアレスで折り返した。しかし2試合とも後半に2点を奪われ、反撃を試みるも流れをつかみ取れないまま連続無得点でタイムアップとなった。
J互いに2得点を挙げた#9イウリ選手と#11高井選手(第39節)
しかし、ホームで迎えた5連戦の5戦目・第39節(ギラヴァンツ北九州戦)でついにレノファの目指すサッカーが結実。序盤に先制されるも直後に#11高井選手の同点弾で追いつき、積極的な攻撃で試合の主導権を握ると前半36分に再び#11高井選手が逆転ゴールを叩き込んだ。後半の猛攻をしのぎ、今度は#9イウリ選手が連続2得点を決めて勝負あり。12試合ぶりの勝利をつかみ取るとともに、圧巻の試合運びで連敗に力強く終止符を打った。
残り3試合を前に、3年間レノファの指揮を執った霜田正浩監督の退任が12月9日発表された。また、ここまで31試合に出場し9得点を挙げた#9イウリ選手が、家族の健康状態の影響でシーズン終了を待たず帰国することも決まった。
第40節(大宮アルディージャ戦)は激しい攻防を繰り広げるも3点を奪われ、#11高井選手がアディショナルタイムに一矢報いるゴールを決めたが反撃はそこまで。極寒のナイトゲームとなった第41節(アルビレックス新潟戦)では、熱戦の末#11高井選手がキャリアハイとなるシーズン11得点目を挙げて勝利した。
3600人を超えるサポーターが駆け付けたホームでの昨季最終戦・第42節(モンテディオ山形戦)は、前半を0-0でしのいだものの後半に2点を奪われ、最後まで攻め込んだが鉄壁の守備を打ち崩せず無念のタイムアップ。有終の美を飾ることはできず、わずかな望みのあった最下位からの脱出も叶わなかった。
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2021年のJ2は22チームで戦い、上位2クラブが昇格、下位4クラブが降格となる。ベガルタ仙台の監督を2019年まで6シーズン務めた渡邉晋氏が新監督に就任し新体制で迎える今年、貪欲に勝利を目指して躍動する選手たちの姿を待ちたい。
「レノファが本当に大好きでした」霜田監督退任、チームは新体制に
J霜田正浩監督
3年間の任期満了に伴い、昨季をもって退任となった霜田正浩監督は、最終戦後クラブ公式サイトを通じて「レノファを愛する皆さまへ」とメッセージを送った。
「選手が目に見えて成長していく姿と、スタジアムでサポーターの笑顔を見ることが日々の原動力でした。レノファをどういうクラブにしていくか、レノファをどうやって成長させていくか、それだけを考え、それだけに全力を尽くしてきた3年でした。結果は全く納得のいくものではありません。悔しさしかありません。でも、皆さんと嬉しい時も苦しい時も一緒に歩んでこれたこの日々は、僕の人生でも忘れられない大切な時間になりました。レノファが本当に大好きでした。こんな僕に幸せな3年間をありがとうございました」
FC東京などでヘッドコーチを務め、日本サッカー協会技術委員長を経て2018年1月、レノファの監督に就任。戦績は、1年目に過去最高の8位、2年目は15位と健闘した。集大成として挑んだ昨季は最下位に沈んだものの、トップチームだけでなくアカデミーや育成を含め一貫した「攻撃サッカー」のスタイルを示し、現在J1クラブで活躍する選手もこれまでに多く輩出した。
積極的に若手を起用して勝利と育成の両立を図り、山口のプロチームとしてレノファを地域に根付かせた霜田監督。その指針や情熱は、新体制となる今年も、レノファの基盤として受け継がれていくはずだ。