当館では、現在「雲谷派の花鳥図」展を開催中(2月21日まで)である。続いて、23日からは「雲谷派の山水図」展。同じ雲谷派といえども、その魅力は全く異なる。
艶やかな花々を背景に、小鳥たちが囀る花鳥の小品は、そこにあるだけで眼と心を癒やしてくれる一方、
水墨の王道ともいうべき山水はそういうわけにはいかない。どんな小品であれ、背筋を伸ばさないでは許されない雰囲気がそこはかとなく漂っている。「風景の奥底に横たわる〈無の境地〉が、おぬしには分からぬのかな?」とでも問われているような。
特に、「草体」と呼ばれるスタイルの山水はその傾向が強い。書でいう草書体のように何が描かれているか判然としないのに、達人が手掛けたことだけは分かってしまうのだ。
墨だけで、ざざっと描かれたこの〈雪景〉もまた、そんな一枚である。
一面の銀世界。黒々とうねる樹木。モノトーンの静寂からは、瞬間の筆さばきに賭けた絵師の息遣いが聞こえてくる。
山口県立美術館副館長 河野 通孝