山口県庁の入口にある藩庁門付近は萩往還ではないが、是非紹介しておきたい。幕末、有事に備えて萩藩は政治の中心を山口に移した。いわゆる山口移鎮と呼ばれるものだが、それに伴って元治元年(1864)に完成した山口御屋形の表門が薬医門形式のこの藩庁門で、太い欅や松が重厚な雰囲気を醸し出している。その一部には江戸上屋敷から運ばれてきた用材が使用されているという。この門と同時に完成したのが現在の県庁エリアとほぼ重なる西洋式城郭・山口城で、藩庁門や堀、かすかに残る土塁などはその名残である。
幕末維新に作られた藩庁門前に立てば、大正5年竣工の旧県庁舎、昭和54年竣工の現庁舎とを同時に視野に入れることが出来る。
文・イラスト=古谷眞之助