コロナ禍で演劇や音楽などさまざまな表現の場が失われる中、山口県立山口高校(木村香織校長)演劇部が、3月21日(日)に演劇上演「春公演」を開催する。思うように活動ができず、つらい時期を乗り越えた1年間の集大成として、一般の観客を前にホールで発表する場を自分たちの手で作り上げた。
会場は山口市民会館(山口市中央2)で、午後3時半からと6時半からの2回公演。
上演される「湯けむりの向こうに」は、2020年度山口県高等学校演劇大会で優秀賞を受賞した作品だ。夏のある日、東京からやってきたライターのオケズミが山あいの小さな町を走るローカル線の無人駅「湯之町」に降り立った。そこに現れた温泉守の老人モリノは、ある不条理な要求をオケズミに突きつける―。
現在、1、2年生合わせて10人の部員で構成されている同部は、顧問の淺川美代子教諭指導のもと、臨時休校明けの昨年6月頃から台本の読み込み、役作り、大道具製作、音響や照明の研究など、「いつか大勢の観客の前で演じられる日が来ること」を願いながら部活動に取り組んできた。
部長の佐郷香菜子さん(2年)は、「臨時休校後に新入部員を迎えて活動を再開したものの、役者同士が近い距離で台詞を言い合う演劇の特性上、コンクールも通常通りには行われず、地区大会は中止、県大会は無観客で行われた。初めて舞台に立つ1年生はホールを埋める観客の拍手を知らないまま2年生の春を迎えようとしている。校内で催したささやかな発表会で、少人数ながらも観客から拍手をもらったとき、演劇は演じる側と観る側がそろって初めて成り立つものだと確信した。春公演を開催する3月31日は、昨年中止となった全国大会で上演予定だった日でもある。何としてでも成功させたい」と話す。
また、今回の公演では、午後5時から「特別上演」と題して、2020年春季全国高校演劇研究大会(春フェス)で中国ブロック代表に選ばれた作品「Change My World」も上演される。ちょうど1年前、同日同時刻の3月21日午後5時は、昨年3月に卒業した当時の3年生が、全国大会の舞台で主演するはずだった。だが、新型コロナウイルス感染拡大防止のため中止に。1年前に涙をのんだ夢の舞台を思い、卒業した元部員と現役の部員が力を合わせて上演する。
定員は200人。鑑賞は無料だが、事前に予約が必要。希望者は、パスマーケット(https://passmarket.yahoo.co.jp/)から申し込むか、代表者氏名・住所・電話番号・鑑賞希望時間と上演タイトル・枚数を、電話またはファクスで同高(TEL083-922-8511、FAX083-922-0503)に伝える。