現在、開催中の「雲谷派の山水図」展(3月28日まで)。このたびは雲谷等璠による屏風を紹介いたします。しかし、なにせ大きい。高さは1.5メートル、幅は総計6.6メートルにもおよぶ。全体像をお見せしようにも、そんな写真を小欄に掲載したら細部がちっともわからない。そういうわけで、写真は思いきって全体の1%のみに。作品左下の端っこである。当然この右上の方には残り99%が遥か彼方へと広がっている。
その1%の端っこから99%をじっと眺めているこの男。名前はわからない。ただ、子供(童子)の従者に荷物を持たせ、自分だけロバの背中で感慨にふけっているところを見ると、何をしても許される偉いセンセー(高士)に違いない。
いったん遠くを眺め始めるともう大変。長時間ぴくりとも動かない。そんなこと、百も承知の童子だが、たまには愚痴が出る時も。本日は荷物を肩から降ろしてひとこと。「いつもいつも、何を見てんだ。うちのセンセーは!」
そんな九十九%です。
山口県立美術館副館長 河野 通孝