友人からキンギョソウの苗を貰った。黄色の開きかけた花が数個ついている。花など育てたことがないので辞退したが、簡単、簡単。庭の隅に植えとけば咲くから、と私の胸に抱かせた。
植えて優しく土をかけ毎日水をやった。四日目には、茎もしゃんと伸び力強くなり蕾も大きな一つの光の塊のようにふくれていった。一週間も経つと花びらが開いた。うん? 花びらが動いている。親指程の重なった花びらが突き上げられるようにツンツンと揺れている。目を凝らすと、花びらの間から葉と同じ色の虫が出てきた。三角のとんがった頭、黒い目。私と目があった。あっ、チョンギースだ。
―何か不都合でも? そんな顔している。よく見ると、虫の鼻先の花びらにいくつか穴が開いている。食べているのだ!
このままにしておこう。なにより流れにまかせておくのが一番だ。手を触れてはならない。庭自体が人工的で自然ではないがそれでも、私などが近づけない深い規律のある世界が、繋がって流れているのだ。私とキンギョソウとチョンギース、一瞬の時の交差。流れの中のほんの気まぐれの出会い。共振する命。みんな同じじゃないか。チョンギースも私もキンギョソウも。それぞれの身体の中は、生きるために激しく動いている。なんか切ない。