昨夜から降り続いた雨が石畳を濡らす。誰もいない朝の香山墓所にたたずむ。1871(明治4)年3月28日、山口新御屋形(現・山口県庁地)において53年の生涯を閉じた毛利敬親は、今この地に静かに眠る。
1836(天保7)年、この年長州藩では、5月に10代藩主・斉熙、9月に11代藩主・斉元、12月には12代藩主・斉広が相次いで他界。翌年4月27日、弱冠19歳の敬親が、13代藩主を襲封した。以来、世子・元徳に家督を譲り隠居するまでの30余年間、率先して質素倹約に努め、文武を奨励し、有能な人材を積極的に登用、育成した。
そんな彼は、幕末維新という激動の時代を生き抜いた名君であった。
防長史談会山口支部長 松前 了嗣