山口市大内御堀の古刹・乗福寺は江戸時代ではなく、大内氏の時代に栄えた寺である。大内氏の始祖と伝わる琳聖太子の供養塔や山口の街を築いた第24代弘世の墓もある。この寺は大内氏の寺というイメージが強く、萩往還からは少し奥まったところにあって、ガイドの際に訪れることは滅多にないが、春秋のモミジは山口一と言える程見事である。
敢えて江戸時代との関わり言うならば、文久二年(1862)武市半平太の書状を久坂玄瑞に届けるため坂本龍馬が萩に向かう途中にここで昼寝を決め込んだという逸話が残っている。筆者もよく訪れる寺で、広い縁側に横になれば余りの心地良さに眠りを誘われる。是非訪れられることをお勧めしたい。
文・イラスト=古谷眞之助